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    flickrの歴史:2004年〜2020年の16年史

     写真共有サービスとして、老舗となった「Flickr」(フリッカー)。サービス開始以来、何度も存続が危ぶまれながらも尚、存続しつづけるFlickrは、コロナ禍に伴う大不況時代を乗り越えることができるのか。
     Flickr歴14年の熱心なユーザーである私が、サービス開始からの16年間をまとめてみました。・・・これからもFlickrが末永く続くことを祈って。
     

    2004年 Flickr誕生とブログブーム

    Flickr誕生の経緯は様々なところで語られていますが、元々はオンラインゲームの機能のひとつでした。それがFlickrという写真共有サービスとして分離され、そして当初の想定とは異なった使われ方でユーザー数が急増していくことになります。
     

    2004年02月:Ludicorp社がFlickrサービス開始
     カナダのオンラインゲーム会社Ludicorp(ルディコープ)社が手がけるMMORPG(マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム:大規模多人数同時参加型オンラインRPG)「Game Neverending」に写真を投稿して共有する機能を設けたところ人気となり、写真共有の機能だけを切り出して「Flickr」というサービスを開始します。

     当初Flickrでは、1枚の写真につき1MBの制限がありました。
     また、運営側の想定では、投稿された写真を題材に、複数ユーザーがチャットをする利用(=画像掲示板のチャット版)を想定していたものの、実際の初期Flickrユーザーの多くは自身のブログ記事に連動した写真を格納しておく場所としてFlickrを活用されたようです。
     
     折しも当時は米国を中心にブログブームが到来していたものの、当時は未だ写真アップロード機能を持たないブログサービスも多かった為に「写真格納・共有場所」としての利用が軸となってFlickrはユーザー数を急拡大します。
     かく言う私もFlickrの存在を知ったのはブログの写真格納としてのFlickrでした。
    (※初期のFlickrでは無料アカウントユーザーは200枚までの写真が登録でき、有料Proアカウントになると200枚制限が解除されるようになっていました)

    ※因みに「Flickr」は、正しい綴りで書くなら「Flicker」(=揺らぐ光、ちらつく光)と「e」が抜けていますが、これは前述のLudicorp社が当初は「Flicker」名でサービス開始をしようとしたものの、Flicker.comドメインが既に「Flicker Beer」というビール用に取られていた為、eを抜かして「flickr.com」とした、とのこと。

      

    2004年5月 タグ機能、コメント機能の追加
     Flickrが優れていたのは、写真の詳細について投稿者が「タグ」で情報づけできた点でした。今でこそTwitterやInstagramでは「#」つきのハッシュタグが使われていますが、こうした投稿者自身が詳細なタグを追加することで検索精度の高い写真閲覧が可能となっています。
      

    2004年10月 What’s in your bag? の流行
     カバンの中身を撮影して紹介する「What’s in your bag?」がFlickr上で流行します。
     この流れは最近ではInstagram等のSNSでも見られますし、雑誌などでも目にしますが、おそらくネット上で最初にムーブメントとなったのはFlickr上のコミュニティだと記憶しています。

    2005年 米国Yahoo!による買収

    当時の米国Yahoo!は単純な道先案内という検索サイトの役割から、自社サイト内に少しでも長く滞在して貰う「ポータルサイト」化を目指し、Webメール(Yahoo! Mail)の強化などと併せ、ユーザーのインターネット利用ニーズを米国Yahoo!内で完結させようと躍起になっていました。
     
    ドットコムバブル(2000年)を経て、事業の再編と強化を打ち出した米国Yahoo!はバブル期に蓄えたキャッシュを活用し買収攻勢をしかけます。当時、ライバルだった検索サービス会社のアルタビスタ等を次々と買収。他にもサービス強化のため、2005年にはRSSサービスのblo.gs社、ソーシャルブックマークのdel.icio.us社など買収を続けます。
     
    そうした買収戦略の一環としてFlickrを持つLudicorp社も米国Yahoo!に買収されます。このとき、Ludicorp社の従業員はわずか9名だったそうです(対する米国Yahoo!の従業員は当時・約12,000名)。
      

    2005年3月 米国Yahoo!がLudicorp社を買収
     買収によりFlickrに変化が生じたのは、サインインに際し米国Yahoo!アカウント取得が必須となった点(これは2019年3月まで続く)。
     また、ユーザーが利用可能なストレージ枠も大幅にアップします。具体的には、Flickr無料アカウントは100MBまで利用可能なのに対して、有料のProアカウントでは容量無制限という当時としては大胆なサービス展開を行います。
     
     ブログ記事に連動した写真保管場所としてのFlickr需要は更に高まり、ユーザーはより大きなストレージを必要としていた時代性とマッチし、Flickrは有料Proアカウントユーザー数が急増したと言われていました。
     また、ちょうど当時は日本においてもブログブーム全盛期であった事から、熱心なブログ投稿者はFlickrの有料Proアカウントを使っており、これが一種のステータス的な差別化にもなっていた程、Flickrは存在感を示すようになります。
     

    2005年3月 ホワイトハウスが公式Flikcrアカウント開始
     米国オバマ大統領率いるホワイトハウスが公式Flickrアカウントを開始。大統領専属カメラマンが撮影する執務中の姿など貴重な写真が公開されます。
     後日談ですが、トランプ大統領就任後もアカウントは継続されましたが、オバマ時代の写真はすべて削除されました。

      

    2005年6月 Flickr Badgeの流行
     前述のようにFlickrはある種、当時は今でいうところの「意識高い系」や「アーリーアダプター」達が好んで用いるサービスという独特な存在感が漂っていました。
     そんな中、Flickrユーザーで流行したのが「Flickr Badge」。これはFlickr非公式ながらも、あたかもFlickrが発行したようなIDカード風のバッヂが作れるというもので、いわゆる当時流行ったジェネレーター系サイトの1つでした。

    2006年 米国Yahoo!サービスとの融合

    2006年は米国Yahoo!がライバルであるGoogle社のサービスに対抗するため、米国Yahoo!の機能とFlickrの連携を強める動きとなります。
     
    米国Yahoo!の検索エンジンは、最初期に於いては人力作業を中心としたカテゴリ登録によるインデックス化だったものが、その後、独自検索エンジン化したものの、2000年6月にはGoogle社の検索エンジンを採用します。
     
    検索サイトにおけるGoogleの存在感が高まるにつれ、2004年2月から米国Yahoo!は再び独自の検索エンジンに戻ることとなりますが、その流れを受けてFlickrも米国Yahoo!の検索サービスに深く入り込んでくる等の変化が見られました。
     

    2006年8月:米国Yahoo!検索結果にFlickr登場、ジオタグ対応
     前述のポータルサイト化を進めていた米国Yahoo!は、検索結果においても自社傘下のサービスに寄せるようになり、検索結果にFlickrに投稿された写真が登場するようになります。
     当時、Google社が「画像検索」を本格化させていましたが、Flickrを傘下に持つ米国Yahoo!なりのアドバンテージ発揮という意図だったのかも知れません。
     また、地図サービス「Yahoo! Map」との連携を行うジオタグ(位置情報のメタデータ)にも対応。こちらもライバルのGoogle社が2005年からベータ版でのサービス開始をした「Google Map」に対抗・強化していく施策であったと考えられます。

    ※いま思えば最もFlickrが注目されていた時期であり、実際のところユーザー数も当時1位だった音楽系SNS「MySpace」や、当時2位だったSNS「Hi5」(米国の他、タイやモンゴル、ペルーなど局地的に利用者のいるSNS)に続いて、Flickrは世界で3位のユーザー数を誇っていた時期でもあります。私がFlickrを使い始めたのも、まさにこの時期でした。
      
     

    2007年 サービス強化

    振り返ってみて、Flickrが最もアクティブに新機能を盛り込む等サービス強化をしていた時期にあたります。月間来訪者数が2,700万人→4,200万人と約1.6倍に増えるなど、右肩上がりの状況でした。

    2007年04月 写真プリント「Imagekind」と提携
     オンデマンド写真プリントのサービスを行うImagekind社と提携し、Flickrに登録した写真のプリントアウト注文がオンラインで可能となります。
     日本ではサービス展開されていなかったので詳細は追っていませんが、サービス開始時は米国内のみを対象としていたと記憶しています(その後、対象地域が拡大したのかは分かりません)。

    2007年5月 米国Yahoo!が「Yahoo! Photos」終了を発表
     ポータルサイト化を進める米国Yahoo!のサービスのひとつであり、オンライン写真ストレージとして2000年3月にスタートした「Yahoo! Photos」。
     Flickr買収時から、類似サービスが同じ米国Yahoo!内に共存していた事は指摘されており、Flickrとの統合が噂されていました。
     米国Yahoo!が下した結論は、Yahoo!Photosのサービスを2007年9月にて終了し、Flickrに一本化させること。
     それほど大きなニュースに為らなかった事やFlickrの仕様が何も影響を受けなかった事からも、元々Yahoo!Photosのアクティブユーザー数は限られていたのかも知れません。
       

    2007年6月 多言語対応
     英語に加えてフランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、スペイン語、韓国語、繁体字中国語(=台湾、香港、マカオ)に対応。
     Flickrは日本からのユーザーもそれなりに居ると思っていたのですが、現時点(執筆の2020年5月現在)でも日本語化はされていません。
       

    2007年10月 ジオタグ機能のアップデート
     ジオタグ機能そのものは、前年の2006年8月に対応済みも機能強化され、地図上からジオタグの場所を選択可能となります。
     これにより直感的に地図上から見たいエリアを選択し、そこに関連した写真を見ることができるようになりました。

    2007年10月 Edit Photo機能の追加
     米国Picnik社と提携し、オンライン上で写真の簡単な編集(トリミング等)ができる「Edit Photo」機能が追加されました。
     このPicnik社は2005年創業したオンライン写真編集サービスですが、Flickrが提携した後の2010年にGoogle社によって買収されてしまいます。

    ※因みにGoogle社はFlickrなど、サードパーティーに対しPicnik社買収後も使い続けることができる、としたことで、FlickrはGoogle社による買収後も暫くPicnik社の機能を使い続けますが、2012年4月にAviary社のサービスに入れ替えを行い、Edit Photo機能を継続しています。

      

    2007年12月 有料Proアカウントに統計機能を追加
     有料Proアカウント(年額$24.95)は、自分の投稿した写真のアクセス数や検索ワード等の分析が可能となります(Proアカウントのユーザーは「Stats」より参照可能)。
     尚、現在では検索ワードについては、Googleなど各社が検索サイトをSSL化したことでデータ表示ができず(いわゆる「not provided」となり)詳細を追うことはできません。

       
      

    2008年 Flickr、生みの親が退職

    この年は、Flickrの生みの親である、スチュワート・バターフィールド氏(Stewart Butterfield)と、その妻のカトリーナ・フェイク氏(Caterina Fake)が米国Yahoo!を退職し、Flickrの運営から離れる事になります。前年の機能強化とは正反対に、2008年以降、Flickrの進化は急ブレーキが掛かることになります。

    ※因みにスチュワート・バターフィールド氏は、その後2013年に「Slack」社を創設します・・・そう、あのコミュニケーションツールとしてエンジニアを中心に世界中で使われて居る、あのSlackですよ(!)。妻のカトリーナ・フェイク氏は米国Yahoo!退職後すぐにクリエティブ・コモンズの理事になった他、テック系の起業も手掛けるなど活躍しています。
     

    2008年2月 Flickr上で、MS社による買収反対運動が展開
     以前から噂レベルであったものの、この頃になるとマイクロソフト社が米国Yahoo!を買収する話が公に語られるようになります。実際、米国Yahoo!はライバルであるGoogle社との勝負で負けが鮮明となってきており、2006年頃からマイクロソフト社による買収交渉をしていました。
     一方のマイクロソフト社も当時、反トラスト法違反で米国司法省と激しくやり合っている時期であり、まさにEvil(イビル:邪悪)な存在と見做されていた時期でもありました。
     こうした背景から、Flickrの親会社である米国Yahoo!を、マイクロソフト社が買収することに嫌悪と危機感を持った熱心な一部FlickrユーザーらがFlickr上で反対運動を展開していました。

    2008年4月 動画機能「Video On Flickr」の導入
     有料Proアカウントを持つユーザーのみ、最大90秒且つファイルサイズ最大150MB迄の動画をアップロードできる機能を追加します。
     当時、爆発的に利用者を伸ばしていた動画サービス「YouTube」(2005年サービス開始、2006年にGoogle社が買収)を意識しての機能追加であったものの、Flickr側が想定した利用は、動画尺の短さやファイルサイズの小ささからも分かるように、モバイルフォン(=当時は未だ初代iPhoneの時代であり、いわゆる伝統的なガラケー時代。尚、初代iPhoneは動画非対応で、2009年発売のiPhone3GSから動画対応)での利用を想定されたもの。
     
     そうした意味で、後の「Instagram」(2010年)や「Snapchat」(2011年)を先取りした試みなのに、この萌芽を活かせ無かったのが今に続くFlickrの脆弱で不安定な状況を生み出した元凶と言えます。
     

    2008年5月 マイクロソフト社、米国Yahoo!買収を撤回
     金額が折り合わず買収交渉は決裂。米国Yahoo!共同創業者のジェリー・ヤン氏が金額交渉を譲らなかったようですが、当時の空気としては「死に体のくせに、米国Yahoo!は何を強気に・・・」と呆れた感じだったのを記憶しています。
     すでに検索サイトとしてGoogleが不動の地位になっており、ポータルサイト化も競合する各社が乱立状態にあり、米国Yahoo!としての優位性も見出せない状況にありました。
     

    2008年7月 Flickr、生みの親が退職
     スチュワート・バターフィールド氏(Stewart Butterfield)と、その妻のカトリーナ・フェイク氏(Caterina Fake)が米国Yahoo!を退職。
     先述の動画機能「Video On Flickr」など時代を先取りした新しい試みはこれ以降、Flickrからは出て来なくなります。

    ※スチュワート・バターフィールド氏がその後の後日談で色々なところで語っている内容から拾うと、巨大企業となっていた米国Yahoo!はとにかく意思決定に時間が掛かることや、米国Yahoo!が写真ストックのために膨大なサーバリソースを費やすFlickrの利益率の低さや、Flickrが培ってきた「コミュニティ」に価値を見出さなかったこと、そしてFlickrの独自のコミュニティが必ずしも米国Yahoo!が目指す方向性にマッチしていなかったこと(※この象徴的な出来事が約1年後に現れます。Flickrの画面上に米国Yahoo!のロゴが掲載されるようになった際、Flickrユーザーのかなりの数がブーイングした)などが挙げられています。
      

    2008年12月 モバイルでも動画再生が可能に
     iPhone等、モバイルでも動画機能「Video On Flickr」が再生可能となります。
     
      

    2009年 Flickr停滞のはじまり

    時代はいわゆる「世界金融危機」の時代に突入します。2007年に顕在化したサブプライムローン問題をきっかけに、2008年秋には後に「リーマン・ショック」と呼ばれる金融危機に陥ります。
     
    前年にFlickr生みの親が退職した米国Yahoo!は、マイクロソフト社からの買収も頓挫し、2008年末には1,500名規模でのリストラを行う等の苦しい経営が続きます。不況と米国Yahoo!の不振状態が重なり、2009年はFlickrとして目ぼしい進化の無い年になります。いま振り返って見れば、前年の2008年を契機に2009年以降が現在まで続くFlickr長期停滞の始まりだったと言えるでしょう。
      

    2009年6月 Yahoo!ロゴの追加
     正確な時期は覚えていませんが、ちょうどこの頃から米国Yahoo!ロゴが併記されるようになります。
     前述のように、米国Yahoo!はマイクロソフトへの身売りにも失敗し、キャッシュ的にもサービス的にも行き詰まり感が漂っていましたので、米国Yahoo!ブランドへの引き締めを目的としているのか、その他サービスにも米国Yahoo!ロゴが表示されて統一感・一体感を出そうとしていました。
     
     旧来からのFlickrユーザーは(私も含め)大反発したのを覚えています。今となってはネガティブなイメージしか無い米国Yahoo!のブランドロゴを冠する事に何の意味があるのか、そしてこれは米国Yahoo!がFlickrの現行サービスに大きく手を入れようとする前触れでは無いのか、など当時は色々な憶測が出たものでした。

    ※米国Yahoo!はドットコムバブル以降の2002年頃から2007年頃まで、Flickrをはじめとした各種サービスを次々と買収し、米国Yahoo!傘下に納めてきましたが、各サービスの多くは買収前とほぼ変わらない独立したサービスのような装いで継続していました。
     買収前から当該サービスを使うユーザーとしては有り難い話ではありますが、米国Yahoo!としての統一したサービスという感じには実際乏しかったのも事実です。
     米国Yahoo!が緩やかな統合を目指していたのか、それとも、サービスの整理統合に興味を持たなかったのか、そこまで余力が無かったのかは分かりませんが、米国Yahoo!の低迷期を印象づける出来事とも言えます。

      

    2009年7月 Twitter連携機能「Flickr2Twitter」開始
     Flickrに投稿した写真をTwitterで共有できる連携機能「Flickr2Twitter」が開始されます(2011年4月にFacebookなど各種SNSに連携する「Share This」機能にアップデート)。
     いまでこそソーシャルメディアへの連携は当たり前の機能ですが、当時は未だTwitter誕生から3年しか経過していない時期であり、ちょうど各サイトで連携機能が実装されはじめた頃でした。
     Twitterのユーザー数も2009年1月時点でのユーザー数20万人から、2009年7月には78万人を突破する急成長を遂げており、この「Flickr2Twitter」開始はベストなタイミングだったと言えます。

    ※かつてはブログの画像保管場所として重宝され急成長したFlickrが、Twitterにも取り組んだのは良い試みだったと考えます。私はTwitterを利用していないので、当時TwitterにFlickrの写真がどのように影響を与えていたかは実感がありませんが、SNS連携機能よるFlickr写真の埋め込みは現在でもTwitter等でよく使われている機能ではあります。
       

    2009年9月 iPhoneアプリがリリース
     同年6月にApple社からiPhone 3GSが出たことから、本格的なスマホ時代が幕開けとなります。
     いまでは当たり前のようなアプリをダウンロードする機能がようやく一般的に使われ始めた頃にあたります。iPhoneのApp Store開始は2008年7月、当時はiPhone 3G(2代目iPhone)であり、続く2009年6月のiPhone 3GS(3代目iPhone)から本格的に普及します。
     実際、iOS App Storeでは、この一年だけで約20万本のアプリがリリースされたと言いますから、そのアプリ開発競争にFlickrとしてもうまく追随できていたと言えます。
     ただし、Android版アプリのリリースは2011年10月まで待たねばなりません。
     

    2009年9月 「Galleries」機能追加
     Galleries機能は、ユーザーが作成する任意のギャラリーに、Flickr上のお気に入り写真を18枚まで選択して展示できる機能です。
     従来までの単純な「Fave」(お気に入り)機能から、自分の気になる・気に入った写真をカテゴライズして登録できる機能でもありますが、いかんせん1つのギャラリーに登録上限数が18枚まで、というのがネック。
     Flickr側としては、その名の通り純粋にギャラリーとして自分が選りすぐりの写真を他のFlickrユーザーと共有するための使い方しか想定されていないと感じる仕様です。現在においてもあまり普及していない機能と考えます。
     

    2009年10月 「People Tag」機能の追加
     写真内の人物にフォーカスしてタグ付けできる、People Tag機能が追加されます。
     
     

    2010年 ほぼ動きのない一年

    米国Yahoo!の低迷を象徴するように、Flickrもほぼ動きのない一年となりました。
     

    2010年6月 UIの小変更
     以前よりも写真が少しだけ大きく表示され、ジオタグに基づく地図も傍に表示されるようになります。
     ちょうどこの頃、一般的なユーザー側のディスプレイサイズがXGA(1024 x 768)から、SXGA(1280 x 1024)などに拡大されていった時期でもあるため、従来のUIでは余白の多い感が否めませんでしたので、このUI小変更はFlickr内の各種コミュニティでも歓迎されていたのを記憶しています(むしろ遅いとの批判さえ)。
      
      

    2011年 兆候を掴みながらも、チャンスにできない

    前年同様にFlickrにほぼ動きない一年となります。この年、時代の転換点を象徴する大きな出来事がFlickrにおいて顕在化しますが、Flickrはそれをチャンスとして活かすことの無いまま・・・ただ傍観します。
     

    2011年2月 スタッフのミスによりアカウントが削除
     Flickr運営スタッフのミスにより、ある利用者アカウントが削除される問題が生じます。そのユーザーは5年間分(約4000枚の写真)が消失し、しかも復旧ができないという状況。
     この出来事がニュースとして話題となった理由は、他でもないFlickr側がリストア機能などを持たずに運営していた杜撰さが露呈した事にあります。ただでさえポジティブな話題に欠けていたFlickrにとって、ユーザー側にサービス利用継続の再考を促すきっかけとなってしまいます。
     

    2011年4月 「Share This」機能を追加
     これまでTwitterへの連携を行う「Flickr2Twitter」はありましたが、これを拡大しTwitterに限らずFacebookなどSNSへの簡単共有を行う「Share This」機能を追加します。
     

    2011年5月 Flickrで最も使われるカメラがiPhone4になる
     Flickrでは投稿される写真のExif情報から使われたカメラ機種を判別することが出来ますが、これまで一眼レフカメラNikon D90が最も多かったのが、iPhone4に置き換わるという出来事が生じます。
     これは写真を撮る行為がカメラ専用機からスマホに転換したことをエビデンスでFlickrが証明した訳ですが、これに対するFlickr側の反応は鈍く、変化の兆候をもっと早くから掴みながらも、チャンスにできずに終わります。

    ※事実、カメラ出荷台数も2011年から減少になる等、まさに時代の転換点でした。Flickrに変わって時代の変化を捉えて刺さりこんで来たのは、ご存知「Instagram」(2010年10月)。Instagramはスマホに特化したサービスとすることで、開始から僅か約半年あまりで爆発的にユーザー数を獲得し、2011年にはその地位を決定的なものにします。本来、この地位に最も近かったのは他でもないFlickrであった訳ですが、Flickrは全く動こうとしませんでした。

    2011年9月 Android版アプリのリリース
     iPhone版アプリのリリース(2009年9月)から2年遅れてAndroid版アプリのリリースとなります。これはFlickrのせいというよりもAndroid OS側の問題と私は考えます。
     実際、Android OSがマトモに使えるようになるのはAndroid 2.3以降(2010年12月)という印象であり、実際、InstagramもAndroid版リリースはさらに遅れること2012年4月まで待たねばなりません。
      

    2011年10月 投稿された北朝鮮の写真が話題に
     香港に住むサム・ゲルマン氏が投稿した北朝鮮の写真が話題に。2011年9月の投稿から約1ヶ月でアルバムが22万ビューを達成。
     因みに当記事執筆時点(2020年5月)のビュー数は約30万弱でしたので、9年近く経過している間に殆どビューが伸びていない事が分かります。後のFlickr衰退を象徴するようなビュー数の伸びですね・・・

      
      

    2012年 存在感の消失

    これまでナンだカンだ言っても、ソーシャルメディアとして上位に食い込んでいてユーザー数がついに他サービスに抜き去られ、ネット上からFlickrの存在感が消えます。

      

    2012年4月 EditPhoto機能の変更
     2017年12月に追加されたEditPhoto機能は、Picnik社の技術を用いていました。そのPicnik社が2010年にGoogle社に買収されたことから、FlickrのEditPhoto機能はAviary社の技術に変更されます。
     新旧ともに私はEditPhoto機能を使ったことない為、詳しくは分かりませんがパッと見では機能アップした感じは見られませんでしたね。
      

    2012年4月 HTML5によるドラッグ&ドロップ対応
     HTML5対応によるドラッグ&ドロップによる写真アップロードが可能になります。
      

    2012年12月 iOS版アプリのアップデート
     従来の等幅サムネイル表示(写真の一部分は欠けて表示される)から、写真全体が表示されるサムネイルに変更されるなど小変更が行われています。
     FlickrはiOS版アプリを2009年9月にリリースしているものの、正直このアプリの出来が酷く、3年以上経ってようやくマトモなアプリになった、という感じです。
     しかし時すでに遅し、スマホからの写真投稿はInstagramに席巻されます。もう誰もFlickrのことなど思い出してくれません。

     ・・・このアップデートがもっと早くに実現していれば・・・もしかしたらFlickrは今のInstagramになっていたカモ知れませんね。

      
       

    2013年 起死回生のFlickr大幅刷新

    この年はFlickrにとって最も大きなアップデートとなります。ここまでの刷新は後にも先にもありません。そして、驚くべきことは、この大幅刷新から現在(執筆時点2020年5月)に至るまで、ほぼそのままの状態で7年も放置状態でサービスが延命され続けていることです。
     

    2013年5月 大幅刷新その1:UI刷新
     従来、サムネイル状の小さな写真と説明文がセットになった一覧表示から、当時流行しだしたフラットデザインを取り入れ、タイル状に写真がグリッド配置されるユーザーインタフェース(UI)に刷新されます。
     非常に洗練されたデザインであることや、改めて写真ファーストなUIとなったことで古臭かったFlickrのUIが一気にモダンになりました。この新UIは既存ユーザーからも概ね好評でした(ただし当時はまさかこのUIが2020年になっても続いているとは想像もしませんでしたが・・・)。

     尚、旧来のUIを好むユーザーには旧表示での方法も残していることにFlickrの配慮が伺えます。

    2013年5月 大幅刷新その2:料金プランの刷新
    これまでの有料Proアカウントが廃止され、広告表示の無料カウントプラン等、料金プランが刷新されます。しかし、複雑で合理性に欠いたプランにはFlickr内の各種コミュニティでは否定的な意見が多く見られました。

    Flickr料金プラン(2013年5月)
    不可解な料金プラン

    ・有料Proアカウントの廃止
     新規Proアカウント登録は廃止され、既存のProアカウントユーザーのみ年額$24.95で更新可能となります。

    ※当然、私もProアカウント継続を望んでいたのですが、更新時に米国Yahoo!の「Yahoo! Wallet」に登録したクレジットカード情報が何故か無効とされ、更新ができずProアカウントが失効。なんどもFlickrサポート窓口にEメールで問い合わせするも、完全に無視され、一度も返信をもらうことができず原因不明なままです。
      

    ・無料プランのストレージを1TBに拡充
     有料ユーザーの獲得に苦労していたFlickrは収益モデルを流行の広告収入に切り替えることにし、ユーザーは基本的に広告表示される無料アカウントとなります。
     その代わり1TBまで大幅容量アップします(従来まで無料アカウントは月300MB迄+最新2,000枚迄だったり、写真ファイルのダウンロードができない制約もあった)。尚、アップロード可能な1枚あたりの写真容量は200MB迄。
     

    ・Ad Freeプラン(年額$49.99)
     広告を消すには年額$49.99を支払う必要がありますが、ただ広告が消えるだけ。容量1TBまで、1枚あたり200MBまで利用可能。
     

    ・doublrプラン(年額$499.99)
     最も物議を醸したのが、このdoublrプラン。年額$499.99(!)を支払うことで、広告表示なし&最大2TBまで容量が使えます・・・が、Ad FreeプランのIDを2つ取得するのと一体どう違うというのか疑問でした。
     このdoublrプランは2013年末にいつのまにか消えたと言われています。
     

     上記のように有料アカウントはわざと魅力を欠いた設定とすることで、無料プランに誘導し、安定期な広告収入とその拡大を目指したものとさえ考えられます。
     新規ユーザーにとってはこれでも良いのかも知れませんが、当然ながら既存Flickrユーザー(とりわけ有料Proユーザー)にはメリットが無く、新料金プランについては総スカンを食らう訳であります。
     

    2013年5月 大幅刷新その3:Android版アプリ大幅アップデート
    前年12月のiOS版アップデートに遅れること半年でAndroid版アプリも刷新され、ようやく使えるアプリとなりますが、Instagramに席巻されており話題にはなりませんでした。

    FlickrはSNSでは無い!と主張するFlickrユーザー
    SNS化を目指すFlickrに反対するユーザーたち

    2013年5月 Flickr is a Service,Not a SNS.
     Fickr運営側は先述の大幅刷新により、従来の有料会員からの収入に頼るのでは無く、広告収入を軸としたマネタイズに変わろうと試みます。
     これは当時、FacebookをはじめとしたSNSが莫大な広告収入を得ていたからですが、そのためにはFlickrにより多くのユーザーが、より頻繁に訪問し、より沢山の時間をFlickr内で費やして貰う必要が生じることを意味しました。
     
     しかし、これまでの経緯から、Flickrはときにブログ用の画像保管ストレージとして活用され、ときにTwitter用の画像保管ストレージとして活用される等、単なるストレージサービスとして使われるケースも多く、Flickr内に各種コミュニティは存在するものの、以前ほど活発に活用されるには至っていませんでした(※1)。にも関わらず、広告収入モデルと変わると宣言したことは実に矛盾していました。
      
     「Flickr is a Service,Not a SNS.(フリッカーはサービスあり、SNSでは無い)」、そうした反発の声がFlickr内コミュニティに見られるようになったものの、この運動はイマイチ盛り上がることなく、それまでのFlickrユーザーが静かに立ち去っていくばかりで、多くの「Groups」(=Flickr内でカテゴリ分けされたコミュニティ)は更新されることなく放置またはクローズされていく始まりの時期となります。
     
     米国Yahoo!が目指した広告収入への切り替えが後に頓挫したのは、他ならぬこれまでのFlickrへの無関心・無理解にあったと考えます。

    ※1:後にFlickrのプロダクト責任者が、SmugMugによるFlickr買収後にをflickrブログ内で語った内容によると、かつて活発だったFlickrのコミュニティが破壊されたのは、無料プランに1TBもの大容量を開放したことに原因があった、と述べています。
     いわく、無料1TBストレージに惹かれてFlickrに傘下した新規メンバーは、そもそも従来からの写真を楽しむことを目的としていたユーザー層と根本的に動機が異なり、Flickr内のコミュニティ破壊に繋がってしまった、との事です。

        

    2013年9月 iOS 7 との統合
     Apple社のiOS 7からTwitterのようにOS内に統合されるようになります。
     これはiPhoneで撮影した写真をそのままFlickrにアップロードできる機能ですが、スマホで撮影→SNS共有は既にInstagramやFacebookが主流となっており、iOSとの統合でFlickrが再び盛り上がる、、、という現象は見られませんでした。
     
     

    2014年 Flickr、オワコン化

    この年になるとFlickrは、ほぼオワコン化します(オワコンという表現自体、死語になりつつありますが・・・)。ライトユーザーが撮影した写真は主にFacebookやInstagramにアップされ、一方でヘビィなユーザーはFlickrを離れて「ImageShack」や「500px」など他の写真共有サービスに流れていった時期でした。
      

    2014年2月 Flickr、10周年
     2004年2月10日のサービス開始から10周年となったFlickr
     

    2014年4月 iOS版/Android版アプリのアップデート
     iOS版/Android版のアプリが共にVer3.0となり、これまでバラバラだったバージョンがここで統一されます。
     

    2014年6月 Bad,bad panda!
     この頃、いわゆる「Bad,bad panda!」と呼ばれるFlickrのサービスがダウンしている時に表示されるパンダの画像が頻発していたものでした。
     Flickrはサービス稼働自体が不安定な状況にありました。

      

    2014年7月 「Marketplace」開始
     写真ライセンスプログラム「Marketplace」を開始。Flickrに投稿した写真を販売して収益化できるプランですが、わずか2年後の2016年9月には終了します。
     これは競合サービスの「500px」等に対抗したものでしたが、既に収益化プランを大々的に打ち出していた他サービスを追随するだけでは利用拡大は望めなかったのかも知れませんね。
     

    2014年10月 iPadに最適化したアプリをリリース
     従来のiOS版アプリはiPhoneの画面サイズにあわせて作られていましたが、新たにiPadの大画面を活かしたiPad専用版アプリがリリースされます。
     

    2014年10月 20 under 20 アワード
     20歳以下の若い写真家20選のアワードを実施。華やかにニューヨークでセレモニーも実施されました。

      
      

    2015年 有料Proアカウント制度、復活

    2013年にモダンなUIへと刷新されたFlickrですが、一部の熱心な古参ユーザー以外にアクティブなユーザーを見かけることが無くなったのが、この2015年頃からでした。

    廃止された有料Proアカウントが復活したのも、この年。無料プランで1TBの大容量を提供し、新規ユーザーを集めて広告収益モデルに移行を試みたのがうまく機能していなかったのでしょうね。
      

    2015年5月 Google Photosが容量無制限に
     米国Google社の写真共有サービス「Google Photos」が無料で容量無制限となり、制限のあるFlickrの無料プランを使う理由が無くなります。
     Flickr上でも「Google Photosに移行しました」とFlikcr上の活動を辞める人が続出したのを覚えています。
      

    2015年7月 有料Proアカウントの復活
     2013年5月に廃止した有料Proアカウントプランを復活。月額$5.99もしくは、年額$49.99に設定されます。
     また、併せて2013年5月の料金プラン改訂前の旧・有料Proアカウントで契約継続をしているProアカウントのユーザーには、向こう2年間は旧Pro価格である年額$24.95での更新契約ができる事も約束しています(=2017年7月迄)。

    2015年9月 高画質を維持した圧縮技術の導入
     デジタルカメラの高画素化に伴い増大するファイルサイズを圧縮するため、Flickrでは高画質を維持しつつファイル容量を圧縮する視覚特性を活用した技術を導入します。これによりファイルサイズを抑えながらも閲覧環境の描画速度向上を果たします。

       

    2015年11月 米国Yahoo!の画像検索結果にFlickr写真が使用
     Flickrは写真を投稿したユーザー自らがタグ付けする等、既に精度の良いインデックス化がされていたことから、米国Yahoo!は自社の画像検索結果にFlickr写真を利用しはじめます。
     ・・・が、対するGoogle社の画像検索サービスは既に2012年段階でアルゴリズムの調整を終えており、類似画像検索など「画像検索といえばGoogle」という程に安定していました。
     今更Flickrのインデックスを画像検索に活用したところで、Googleに対するアドバンテージには成らなかったのが現実です。
      

    2015年12月 Gear VRで360度パノラマ写真に対応
     韓国・サムスン社のVRゴーグル「Gear VR」で360度パノラマ表示できる、との謳い文句でしたが、VR自体が未だ全く普及していなかった(そして当記事執筆中の2020年においても普及していない)ことから全く話題になりませんでした。

      
     

    2016年 Flickrって、まだあったの?

    2014年以降、Flickrはネット上から急速にその存在感を消し、2016年頃には殆どの一般ネットユーザーはFlickrの存在すら知らないといって過言じゃない程に悪化していきます。
      

    2016年3月 It’s Not Me, It’s You, Flickr.
     「It’s not me, It’s you, Flickr. We’re done. 私じゃない、Flickrあなたよ。私たちはおわったの」。
     カメラや写真の情報を集めたサイト「DigitalRev」に書かれた記事(現在は既に削除されている)が話題となりました。
     あんなにトキメキを覚えたFlickr、それが今や魅力の無いサービスに成り下がってしまったことを嘆く記事でした。それは恋人との別れのように。

     

    2016年7月 ベライゾン社が米国Yahoo!を買収
     米通信大手ベライゾン・コミュニケーションズ社が米国Yahoo!を買収。
     ベライゾン社が傘下に持つインターネットサービスプロバイダのAOL社と統合されることになります(実際にAOLと統合されたのは、買収手続きが完了した2017年6月に。新会社「Oath」として再出発し、FlickrはこのOath社の傘下となります)。
      

    2016年9月 「Marketplace」終了
     2年前にスタートした写真ライセンスプログラム「Marketplace」が終了します。ユーザーの収益化を促すライセンスプログラムでしたが、既にそうしたユーザーは他社サービスに移っていたこと等から全くインパクトを与えることなく、ひっそりとサービスが終了されることとなりました。
      

    米国Yahoo!から私の個人情報が流出したことを告げる知らせが届く
    私の個人情報が流出したことを伝える米国Yahoo!からの通知

    2016年12月 米国Yahoo!個人情報流出
     米国Yahoo!の個人情報流出問題で、10億人の個人情報が影響を受けました。Flickrアカウントにも影響が出て、Flickrログオン時のパスワード変更が必要となります。米国Yahoo!はこれまで9月にも5億人以上の個人情報流出をしており、あわせて15億人分。
     ・・・さらに実は後に発覚するのですが、2013年8月に発生したアカウント情報窃取事件で全ユーザー30億人分のアカウント情報が流出していたようで、米国Yahoo!には参ったものです。
      
     

    2017年 失われた1年

    この年、Flickrは実質大きな動きが何も無い1年となりました。

    前年にベライゾン社による米国Yahoo!買収を経て、旧Yahoo!事業の再編が行われている中、Flickrに関する動きがなにも無かったことから「いよいよFlickrもサービス終了か?」なんて囁かれた頃でもあります。

    Flickr内のあらゆるコミュニティが過疎化・閉鎖が進み、フォローしていたユーザーの多くもこの時期にはほぼ姿を見なくなる程でした。
      
     

    2018年 SmugMugがFlickrを買収

    ほぼ死に体と言える状況にまで悪化したFlickrでしたが、写真共有サービスを展開する中堅企業・SmugMug社がFlickrを買収します。
     

    2018年4月 SmugMug社がFlickr事業を買収
     Verizon/Oath社の傘下だったFlickr事業を米国SmugMug社が買収を発表します。
     SmugMug社は2002年から続く写真共有サービスですが、FlickrやGooglePhotos等と決定的に違うのは、プロの写真家や、ハイアマチュアの写真家たちを中心に高クオリティの作品を発表する場として進化していった点です。
     SmugMugのサービスは有料会員のみで、自ら投稿した写真に電子透かしを入れたり、写真販売による収益化ができた写真に特化した高機能化を只管突き進めていく硬派なサービスでした。
     
     そうした「写真のことをよくわかっている」SmugMug社がFlickrを買収してくれたことは、Flickrユーザーにとっては救いだったのでしょうが、反面、ファイナンス面では決して余裕があるとは思えないSmugMug社が果たして金食い虫であるFlickrを維持しつづけられるのか、当初の段階から疑問の声は上がっていました。
      

    2018年11月 SmugMag体制後の新料金プランを発表
     SmugMag体制後、さっそくFlickrの料金プランが見直されました。
     新料金の適用は2019年1月から。2013年5月から引きずっていた無料アカウントによる広告収入プランはお世辞にも成功しておらず、SmugMagのサービスのように、有料化プランを軸としたものに変更されることは予想されていました。
     新料金プランは無料「Free」と有料「Pro」の2つを軸としたプランに変更されます。

    ・無料「Free」プラン
     1アカウントあたり1,000点までしか保存できなくなる。従来同様に最大容量は1TBまで。広告表示あり。

    ・有料「Pro」の「Monthly Plan」
     有料のPro「Monthly Plan」では、月額$5.99を支払うことで、容量制限なし。広告なし。動画のアップロードは最大10分迄可能に(従来は90秒迄→いつのまにか3分迄可能になっていた→今回10分迄)。

    ・有料「Pro」の「Annual Plan」
     有料のPro「Annua Plan」は、1年契約により年額$49.99と、Monthly Planよりも割引で契約できます。容量制限なし。広告なし、動画のアップロードは最大10分迄可能に加えて、Adobe製品などの割引優待購入も受けられるプランとなっています。
     

    最初期の有料Proアカウントが、年額$24.95だったことを考えると、安価なAnnual Planでも年額$49.99と2倍の値上げになっている事が分かります。
      
      

    2019年 赤字Flickr、さらにキャッシュが必要に

    SmugMag社に買収されたFlickrですが、Flickr事業は赤字垂れ流しが続き、SmugMag社のCEOが泣きを入れる程になりました。相次ぐ料金プランの値上がりなどから、古参ユーザーも決定的に減った1年だったと考えます。
     

    2019年1月 新料金プランの実施
     前年11月に発表された新料金プランが実施。SmugMagのサービスに倣って有料Proアカウント会員数の増加を目指すことになります。
     ただ、年額$49.99という有料Proプランを敬遠したのか、しつこく残っていた古参ユーザーもFlickrから消えていくことになります。
     

    2019年3月 無料プランの超過分写真の削除を実施
     新料金プランにより、無料のFreeアカウントでは、最大1,000点までしか写真の保存ができない為、その超過分を2019/3/12に削除されることとなりました(当初アナウンスでは2019/2/5に削除)。
     尚、この際にCCライセンスで登録された写真は削除対象に含めないことも発表されています。
     

    2019年3月 ログインに米国Yahoo!のIDが不要となる
     当初、2019年1月から実施予定だったログインに米国Yahoo!のIDが不要となる仕様変更がようやく行われました。
     

    2019年3月 「in memoriam」アカウントを新設
     死亡したユーザーの写真を継続保存する「in memoriam」アカウントが新設されました。
     亡くなったFlickrメンバーの有料Proサブスクリプション期間が執行しても、アカウント内のすべての写真(ただしパブリックコンテンツのみ)が保存されます。尚、申請には亡くなったアカウント保有者との法的権利を持つ家族などの証明が必要となります。

      

    2019年5月 大規模メンテナンスの実施
     Flickrは数億GBもの写真とビデオのデータ、1億以上のユーザーアカウントを扱っており、処理レスポンスの低下や不安定さが問題視されていました。
     これを解決すべくSmugMug社はFlickrをAWS(Amazon Web Service)に移行することを決断します。
     Flickrのサービス開始から、これほど大規模なメンテナンスが行われることは初めてであり、実に12時間にも及ぶサービス停止の末、無事に完了しました。

      

    2019年8月 有料プリントサービス「Prints」機能が追加
     有料プリントサービス「Prints」機能が追加されます。
     このサービスは日本からも発注可能なようですが、私は未だ試したことがありません。
     

    2019年12月 SmugMug社のCEOから悲痛な緊急メール
     Flickrユーザーに向け、SmugMug社のCEOから長文の緊急メールが届きます・・・もっと有料Pro会員になってくれ、と。
     
     要約すると
    Flickrは2年前、年間数千万ドルにも及ぶ赤字を出していた。
    何百億もの貴重な写真を守るため、SmugMug社はFlickrを買収し救った。
    FlickrをAWS(Amazon Web Service)に移行するなどのアップデートもしてFlickrの安定化と高速化を果たしてきた。
    何十万人ものFlickrユーザーが有料Proアカウントに参加してくれた。
    しかし、Flickr事業を継続するにはもっとキャッシュが必要だ。
    もっと多くの有料Proを利用してくれるユーザーが必要だ

        
       

    2020年 SmugMugはFlickrを支えられるのか

    昨年末にSmugMug社のCEOから「もっと有料Pro会員を増やさないと維持できない!」と泣きが入ったFlickrですが、年明け早々に大胆にも2度目の料金プラン変更(=値上げ)が発表されます。

    折しも2020年は新型コロナウィルス感染拡大に伴う世界規模での大不況に陥っており、果たしてFlickrがいつまでサービス継続ができるのか、心配が尽きません。

    唐突に値上げされた有料Proプラン
    唐突に値上げされた有料Proプラン

    2020年1月 さらなる料金プラン変更で値上げ
     突如、有料Proアカウントの料金が値上げされます。
     従来は月額($5.99)もしくは年契約($49.99)の2つしか無かったのが、月額$1の値上げと共に4つの有料プランに変更となりました。
     また、いままで最初期の有料Proアカウント(年額$24.95)を継続更新することで、昔の料金をキープできたのですが、それも継続更新が不可となりました。

    ・1ヶ月契約($6.99) ※従来より$1の増額
    ・3ヶ月契約($18.99)
    ・1年契約($59.99) ※従来より$10の増額
    ・2年契約($117.99)

     私は昨年、有料Proアカウントを1年契約をしていましたが、Flickr応援の意味を込めて追加2年契約を申し込みしました。
     これで2022年11月まで先払いしたことになる訳ですが、果たしてそれまでFlickrが事業継続しているのか・・・不安になりなりがらも応援を続けたく考えます。
     
      

    最後に:なぜ、Flickrなのか

     私がFlickrを愛して止まないのは、あらゆる意味で「写真ファースト」な点です。私自身、さまざまな写真共有サービスを有料/無料とわず試してきましたが、たとえFlickrのコミュニティが崩壊しかかっていても、写真をいかにシンプルに愉しめるか、という点においてFlickrは過去一貫して、どの類似サービスよりも長けています。
     GooglePhotosよりも高機能で、だけれどもSmugMugほど本格的ではない、日常の記録をシンプルに美しく残し共有できる場所として、Flickrの永続を心より願っております。〔了〕
     


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