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    コンタックスT2は刻の涙を見る

    私の愛用するカメラの1つに「CONTAX T2(コンタックスT2)」があります。近年、CONTAX T2が静かなブームになる[Link]等、いま尚、旬なカメラです。



    バブル絶頂と言われる1990年に当時12万円で発売されたフィルムカメラ「CONTAX T2」。レンズは、Carl Zeiss SONNAR T* 単焦点38mm/f2.8搭載。シャープな描画と暖色系の絵づくりが特徴。チタンの外装にサファイアガラスを奢ったファインダーなどなど・・・細かいスペックは既に多くのWebサイトで提供されているので割愛しますが、その美しい本体デザインと相まって、使ってよし・眺めてよし(!)な傑作カメラと言えます。


    佇まいが美しい
    コンタックスの歴史(Contax時代、CONTAX時代)についても、既に多くのWebサイトで言及されているので割愛しますが、私が愛するのは、いわゆる京セラ時代の大文字CONTAXの最大のヒット作である、この「CONTAX T2」です。

    コンタックスT2

    私がCONTAX T2を意識し始めたのは、1991〜1992年頃。近所のスーパーに入っていた小さなカメラ屋のショーケースに収められたCONTAX T2を見た事にはじまります。スーパーの一角に、ほんの小さな店構えでスピード現像が売り上げの大半を占めるであろうその店に、数台だけ販売在庫として置かれていたカメラの1つがCONTAX T2でした。当然、売れている様子は無く、数年に渡り店頭に並んでいたのを記憶しています。

    CONTAX T2に惹かれた理由は、その美しい佇まい。「シンプルさ」と「流麗さ」が合わさったフォルムに目が奪われます。私はそのCONTAX T2を、憧れのトランペット見つめる黒人少年の如く見つめていました。

    コンタックスT2

    それから15年ほど経過したある日、中古カメラ屋で偶然見つけたCONTAX T2。思えばショーケースのガラス越しに眺めた事はあったものの、実際に手に取る機会は無かったこともあり、何気なく店員にお願いして触らせて貰ったのが決定打。手に持った瞬間「これ買います」とレジに向かう程にチタンの硬質な手触りが素晴らしい。

    当時は未だ市場にコンパクトデジタルカメラが活況で、キヤノンIXYやニコンCOOLPIXが幅を利かせていた時代。そうしたプラスチック製ボディに慣れた身にCONTAX T2の持つチタンの質感は極めて新鮮な体験でした。


    シャープなのに暖かみのある描画
    CONTAX T2と組み合わせて愛用したフィルムの1つが「Kodak Gold 100」(2012年に販売終了)。ISO100という低い感度故に室内や夜間での撮影は辛いと言われるこのフィルムでしたが、CONTAX T2のレンズはf2.8と明るかったこともあり、日差しの入り込む日中の室内であれば、美しい描画が得られました。

    コンタックスT2で撮影
    Kodak Gold 100にて撮影

    コンタックスT2で撮影
    Kodak Gold 100にて撮影。夜間においても手ブレさえ気をつければISO100でも、まぁ、それなりに撮れるものです。

    コンタックスT2で撮影
    Kodak Gold 100にて撮影。フィルム独特の粒状感が青空に奥行きを与えてくれているようで好きな描画です。

    暗い夜間に撮影する際は、「Kodak SUPER GOLD 400(2016年に販売終了)」や「FUJIFILM Natura 1600(2018年に販売終了)」のような選択もありますが、デジタルカメラと異なりフィルムカメラは一度フィルムを入れると使い切るまでISO感度が固定されてしまう点(=ISO100のフィルムを入れたら当然ながら撮りきるまで、ずっとISO100な訳で)が今となっては不便ではあります。

    コンタックスT2で撮影
    Kodak SUPER GOLD 400にて撮影

    コンタックスT2で撮影
    Kodak SUPER GOLD 400にて撮影

    コンタックスT2で撮影
    Kodak SUPER GOLD 400にて撮影

    コンタックスT2で撮影
    Kodak SUPER GOLD 400にて撮影

    コンタックスT2で撮影
    FUJIFILM Natura 1600にて撮影。フィルムの巻き上げ失敗も”味”になります。

    いずれもシャープさと暖色系の色合いが大変好みでした。




    私がCONTAX T2を使わなくなった理由
    正直、購入した最初の2〜3年はよく利用していたものの、それ以降は部屋の飾りになって佇まいを眺めて満足な日々でした。私がCONTAX T2を使わなくなった理由は3つあります。

    1つ、愛用のフィルムが生産終了になった為。
    2012年にISO100のKodak Gold 100が販売終了になった事が痛手でした。個人的にはCONTAX T2との組み合わせが抜群と考えていただけに残念でなりません。

    2つ、私の指の動きに馴染まなかった為。
    私の場合、CONTAX T2を右手で掴んだ際に、人差し指がシャッターに自然な形で落ちていかず=私には押しにくいシャッターだった為です。このあたりは個人差の問題なので仕方ありません。

    3つ、PowerShot G11の写りが素晴らしかった為。
    2009年に発売されたキヤノンのコンパクトデジカメPowerShot G11を持っているのですが、この写りが素晴らしいのです。
    キヤノン・パワーショットG11
    PowerShot G11は、昨今では珍しい絶滅種となったCCDセンサー(有効約1,000万画素の1/1.7型CCD)を採用しています。CCDセンサーの特徴であるシャープな描画はレンズ性能と相まって美しい写真を残してくれます。また、センサーサイズの小ささや2009年製という古さ故に暗い場所での撮影ではノイズが乗りがちですが、そのノイズ感がフィルム粒状のような趣きがあり、私はむしろ肯定的にこれを認めています。


    高騰するCONTAX T2の中古相場
    フィルムの生産終了が相次ぐ[Link]のに反し、CONTAX T2の中古相場はどんどん値上がりしています。実際、ヤフオク!での相場も2018年11月時点で約64,000円と私が購入した当時の中古価格から2倍もの値付けになっています。

     

    Contax T2: The World’s Trendiest Compact Camera?
    https://www.thephoblographer.com/2017/09/01/contax-t2-worlds-trendiest-compact-camera/
    “Also, the price has gotten insanely expensive on eBay — between $400 to $600 for the basic titanium model.”
    「基本的なチタンモデルで、Bayでの価格は$400〜$600と非常に高価になっている」

     

    コンタックス T2|買取価格急上昇中のコンパクトフィルムカメラの先駆け
    https://ishiicamera.com/blog/contax/t2
    「T2はバブル期に流行した高級コンパクトフィルムカメラのジャンルに入りますが、その高級コンパクトカメラの価格が近年急上昇しています。(中略)フィルムカメラ人気の再燃の中でも特に買取価格が上昇しています。」

     

    高級フィルムカメラ『CONTAX T2』再びブームなの?
    https://monotabi.net/?p=2788
    「そんなCONTAX T2ですが、現在中古価格が高騰しつつあるようです。数年前まではオークションの落札価格は2〜3万程度が相場だった気がしますが、今は平均4〜5万前後で落札されているようです。さらに、お店で購入する場合はもう少し高く、状態次第では6万以上の値段がついている模様です。」

     

    私のT2の場合、箱も説明書もケース等の付属品も全て捨ててしまって本体しか手元に残っていない事や、其れなりに使い込んだので外装に擦り傷も見られる事から、そこまで高額にはならないものの、購入時の価格はペイ出来てしまう査定価格が付いています。

    殆ど使う事のなくなった昨今、いっそ売却してしまえば良いのかも知れませんが、CONTAX T2を手に取った瞬間、売却への想いが失せてしまうのは、その美しい佇まいと手のひらから伝わる質感の高さ故に他なりません。机の上で静かに佇む姿を眺めては悦に浸る日々はこれからも続きそうです。

    コンタックスT2


    CONTAX T2は、刻の涙を見る。
    CONTAX T2が切り拓いた「高級コンパクトカメラ」というジャンルは、いまやデジタルに置きかわり、ソニーのRX-100シリーズ[Link]に代表されるように急速な進化を続けています。

    一方で、デジタル化により商品サイクル自体が短縮化された弊害ゆえに1つのモデル(商品)にかけるコスト的な制約も多く、CONTAX T2のような存在感や質感をまとっているカメラは中々出て来ないのも事実です。

    コンタックスT2のファインダー

    CONTAX T2は、約30年の刻が経過した今も尚、色褪せてはいません。しかし残念なことに、CONTAX T2が創った道は、2005年のCONTAXブランド終了[Link]と共に断ち消えている状態にあります。

    「CONTAX」の商標は現在、ドイツのカールツァイス社が有しており[Link]、さらにCONTAX復活の噂もチラホラ出てきている[Link]ことからファンの一人としてCONTAX T2片手に吉報を待ちたいと考えます。
    [了]



     

    コンタックス T2 ゴールド 2.8/38 / CONTAX T2 GOLD
    コンタックス TVS
    魅惑のコンタックスTシリーズ (エイ文庫)


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