• 米国PELICAN社のペリカンケースなどハードケース愛好家のためのサイト
    分解して持ち出すという逆転の発想

    「ペリカンPC」という言葉をご存じでしょうか。米国在住のITエンジニアにしてガジェット系・人気YouTuberであるドリキン氏(@drikin)が実践した試みで、組み立て式の自作PCを堅牢なペリカンケースにバラした状態で収納し、旅先で組み立てを行うというある意味で逆転の発想とも言える試みです。

    なぜ氏はこのような試みを行なっているのか、それを実現可能にしているファクターは何なのか、そしてその効果や私たちが氏の試みから何を学び得る事が出来るのか記事としてまとめてみました。
     

    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」
    drikin氏のtwitterより
    ドリキン氏がTwitterにツイートした「ペリカンPC」より引用
    https://twitter.com/drikin/status/1151558062768975872
    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」

    ガジェット系YouTuberとして人気のドリキン氏は、雑誌「Forbes JAPAN」が選ぶトップインフルエンサーにも選ばれる(2019年9月)等、主にガジェット好き中年男性層を中心に支持を受けています。
     
    ドリキン氏の活動は、ブログ黎明期から独自の視点を交えた発信を続けていた人物。時代の移り変わりと共に、ブログからポッドキャスト番組Twitter、更にはYouTubeへ進出、更に最近ではnoteでの有料コンテンツ配信まで手掛ける等、媒体や手段こそ様々なれど一貫して発信し続けるその姿勢に徐々にフォロワーが積み増されてきた印象です。
     
    私自身、テック業界の片隅に生きる一人として氏がメインパーソナリティを務めるポッドキャスト番組「backspace.fm」は古くから拝聴しており(といっても正直それほど熱心なリスナーでは無いのですが・・・)その番組内で出て来たのが、ドリキン氏の「ペリカンPC」という試みでした。
     

    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」

    ドリキン氏が提唱する「ペリカンPC」とは、米国と日本を頻繁に往復する中で出張先でもパワフルで快適なPC環境を実現すべく組み立て式の自作PCをユニット単位で分解し、堅牢なペリカンケースに収納して旅先で再び組み上げる事でデスクトップPCをそのまま持ち出してしまおう、という大胆な発想のよるもの。
     
    ドリキン氏はそれまでゲーミングノートPC等のパワフルなマシンを用いていたものの満足に至らなかった様子で、このデスクトップPC自体を丸々持ち出そうという通常では(例え思いついても)試みない手法を取るに至っています。
     
    また、こうした手法が実現できた背景には、高性能なポータブル型の小型液晶ディスプレイというHDMIポート1つで簡単に接続できる環境といったアウトプット装置の進化も後押ししていると考えます。
     

    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」
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    backspace.fm #301:ペリカンPCってなにそれおいしいの?

    http://backspace.fm/episode/301/
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    悲報:ペリカンPC、失敗に終わる
     
    上記にて意気揚々と紹介されていた「ペリカンPC」ですが、後日談として、日本-サンフランシスコ間のフライト3往復(=6回分のフライト)を経て、PCのマザーボードが故障したそうです。
     
    backspace.fm #312:「ゼンジ、ドリキンに買わせたディスプレイで謝罪(後編)」の1時間12分あたりにて解説されています。
    http://backspace.fm/episode/312-2/
     
    いわく、飛行機の貨物室に預けた為、高高度における気温差で結露が生じてマザーボードが故障したのではないか、と推論されています。
     
    しかし、ペリカンケースには水分子を通さないゴアテックスの自動気圧調整バルブが付いてますし、なにより貨物室も客室と同じように気圧調整されています(その証拠にペットを飛行機で預ける際は貨物室での空輸ですからね。客室よりは寒いので気温対策は必要なようですが)。
     
    また、以下のサイトに説明されているように、飛行機貨物室の温度もある程度、適温に保たれていることが分かります。
    http://blog.ac.eng.teu.ac.jp/blog/2016/09/post-668c.html
     
    真相は分かりませんが、私は組み立て時や梱包時における「静電気」が原因では無いか?と推察します。パソコンのマザーボード等の電子部品は静電気防止袋に入れて輸送する必要がありますが、YouTube動画などを拝見する限り、そのような措置はされていないように思えた為です。少なくとも私には、ペリカンケースに起因する問題のようには感じませんでした。

    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」
    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」

    用いられているペリカンケースは「Pelican 1535 Airケース」。飛行機での移動を考慮すると少しでも重量の軽いAirケースを選択するのは大正解と考えます。

    このペリカン1535Airケースのフォームを活用してユニット毎に分解されたPCパーツを安全に包んでいる様子が上記に掲載したドリキン氏のYouTube動画からも伺えます。
     
    併せてThinkTank Photoのペリカンケース1510用リッド・オーガナイザーを用いているようで、ここに液晶ディスプレイ等を収納しているように動画から伺えます。
     

    もっとも、ドリキン氏は別に熱心なペリカンケース愛好家という訳では無いようで、最適なケースを探した中でペリカン1535Airケースに辿り着いた模様。というのも以前にドリキン氏のYouTubeライブにてドローン(Skydio R1)を収容する最適なケースが無いか視聴者とのチャットを展開している中で複数名からペリカンケースを提案されたものの「ペリカン?何それ?」という反応だった事からも伺えますが、PC収納ケースに1535Airケースを選んだセンスは流石といった感じです。

    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」
    こうしたケース組み込みの例は以前より見られたが・・
    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」

    もともと、ペリカンケースと精密機器である自作PCとの相性は良いと言えます。
     
    上記画像のように、従来からペリカンケースそのものをPCケースに見立ててパーツを組み込み、高性能な可搬性デスクトップ機を構築する試みは、ネット界隈でそれなりに見かける試みでしたが、ドリキン氏のように自作PCをバラして現地で組み立てる、という発想は(私の知る限り)見たことがなく、それ故にインパクトの強いものでした。
     

    Pelican Air 1535 with Padded Dividers (Black) [並行輸入品]
    ペリカンケース愛好家のためのサイト「ペリカンラバーズ.com」

    興味深いペリカンPCですが、実運用上はどうなるのか?が気になるところ。
     
    ドリキン氏の動画ではペリカンPCのその後を幾度となく紹介していますが、組み立ても5分程度で仕上がり、難なく機動できた際は快適なPC環境を満喫しているようです。
     
    ただ、同じくドリキン氏のアップした他の動画内ではPC組み立てパーツに起因する(と推察される)細かい問題点に難儀し悪戦苦闘している様子も紹介されており、中々一筋縄では行かないようです。

    ドリキン氏の動画やポッドキャストが人気なのは、こうした試行錯誤を惜しみなく曝け出している点にあると考え、ペリカンPCについて今後の成り行きに注目したく考えます(一方で氏は移り気も早いので「これだ!」と思うモノを見つけたら身軽に乗り換える事から、この記事をあなたがご覧いただいている頃には既にペリカンPCが過去の一過性の試みにとして葬り去られているかも知れません)。
     

    ペリカンPCの試みから私たちが学べる事は何でしょうか。
     
    それまで可搬性は無いと思われていたような構成で且つデリケートな精密機械でも、堅牢なペリカンケースに収納でき、分解・組み立てが容易に可能であれば用途の可能性が一気に拡大する、という事にあると考えます。
     
    例えば「3Dプリンター」。3Dプリンターのモビリティ性が向上すれば、私たちは何処ででもモノの生産が可能となります。
     
    しかし、現在市販されている3Dプリンターは概ね立方体の形状をしており、尚且つその筐体の大きさによって作成できるアイテムの大きさが決まってしまう為、大型の3Dプリンターの持ち運びは難儀なもので、デジタルファブリケーションにおける物理的な制約の1つでした(=3Dプリンターが設置された場所まで行かなければ形成できなかった)。
     
    もしも分解可能な構造の3Dプリンターができ、尚且つそれがペリカンケースに収まる大きさにまで分解ユニット化できれば、必要とされる現場にまで持ち込んでその場で必要とするパーツなりを3Dモデリング化し、更に3Dプリンターで形成が可能となります。
     
    ペリカンPCの「バラして持っていき、現地で組み立てる」発想は、他にも様々な応用が利きそうであり、興味深い試みと考えます。[了]
     


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